いったいなぜすでに成立している「インフル特措法」を適用せず、新法成立という後手後手に回らざるを得ない道を選ぼうとしている
のでしょうか。
安倍首相が2月27日、政府の新型コロナ対策本部で新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するため、インフル特措法を参考とした新しい
法整備を早急に検討する考えを示しました。
28日の衆院総務委員会でも安倍首相は「『新型インフルエンザ等対策特別措置法』を参考に早急に検討する。早期に成立させなければ
ならず、野党のご意見も伺い、ご協力をいただきたい」と述べて野党の協力を求めています。
インフル特措法は正式名称を新型インフルエンザ等対策特別措置法といい、2009年に世界的に流行したH1N1亜型インフルエンザ
ウイルスへの対応が混乱したことを踏まえて2012年5月11日に制定されました。
この法律が対象とするのは「新型インフルエンザ等」。同法でこの用語が何を意味するかは第二条に記されています。
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 新型インフルエンザ等 感染症法第六条第七項に規定する新型インフルエンザ等感染症及び同条第九項に規定する新感染症(全国的かつ
急速なまん延のおそれのあるものに限る。)をいう。
(新型インフルエンザ等対策特別措置法より引用)
新型インフルエンザに加えて「新感染症(全国的かつ急速なまん延のおそれのあるものに限る。)」となっています。感染症法第六条
第九項は以下のとおり。
9 この法律において「新感染症」とは、人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は
治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命及び
健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。
(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律より引用)
インフル特措法では、全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがある場合に
内閣総理大臣が「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」を行うことが可能です。
これによって都道府県知事は住民に対して外出自粛の要請が可能となるほか、学校、社会福祉施設、一定規模以上の競技場、映画館、
ホール、劇場などの使用制限やイベントの自粛を要請することも可能に。
また臨時に医療施設を開設するため、土地、家屋又は物資を強制的に使用することができるようになります。加えて必要な医薬品、
食品などの売り渡しを業者に要請することも可能で、業者が不当に応じなければ「収用」した上で罰則を科すことも可能に。
ということで、現在新型コロナに対して検討されている対策を政府や自治体の首長の権限と責任の下で実行する強力な法的根拠となるもの。
インフル特措法を参考にするではなく、そのまま使えばいいのでは…と思われますが、なぜダメなのでしょうか。
(続く)
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