「今般、積極果断な措置を講じることとしました」──。3月5日、安倍晋三首相(65才)は政府の感染症対策本部の会合でこう強調した。
政府は新たな「水際対策」として、中国と韓国からの入国者に2週間の待機と公共交通機関の使用禁止などを実施、短期滞在者向けの
ビザを停止する考えも示した。事実上、中韓両国からの入国拒否に踏み切ったのだ。
だがその措置については、「なぜいまさら…。すでに水際対策は失敗し、国内でも蔓延状態だ。入国拒否をするならもっと早くするべきで、
もう意味がない」(自民党関係者)との声が与党内からも聞こえる。
そもそも日本政府が国内で、中国・武漢に滞在歴がある人の新型コロナウイルス感染を初めて確認したのは1月15日だった。
中国でその後も感染者が爆発的に増え続けたのは、ご存じの通り。習近平国家主席(66才)は1月20日にウイルスの封じ込めを指示し、
その3日後に武漢を封鎖。1月30日には、世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言を出した。
その時点ですでに他国は大きく動き出していた。
「シンガポールはWHOの緊急事態宣言が出ると翌日に中国人と中国本土から渡航している人の入国を禁止し、中国人ビザの発行を停止しました。
中国から遠く離れたアメリカでさえ危機感が強く、31日に中国からの入国の全面拒否を発表しました」(全国紙社会部記者)
前述のように、日本でもすでに感染者は確認され、じわじわと数を増やしつつあった。しかも、中国は春節の長期休暇を迎えて、膨大な
人数の中国人旅行者が来日することは目に見えていた。
危機の予兆は充分にあったにもかかわらず、日本政府の対応の規模は小さかった。政府がようやく中国からの入国拒否に踏み切ったのは、
アメリカと同じ1月31日だったが、アメリカやオーストラリアなどが中国全土からの入国者を対象にしたのに対し、日本は武漢のある
湖北省しか拒否しなかった。その後も、2月12日に浙江省を追加しただけだ。
「政府の対応が遅れた背景には、4月に国賓来日を控えていた習近平氏への遠慮や、今夏の東京オリンピックへの影響を避ける狙いがあったと
指摘されます。そうした躊躇が、水際対策を完全に“決壊”させ、国内の感染者の増加に歯止めがかからなくなった。
いまごろになって中国全土からの渡航を拒否しても、とっくに感染が拡大しているので効果は望めません。政府の遅すぎる対応には疑問
だらけです」(前出・全国紙社会部記者)
(続く)
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