鈴木しんじ 博士(理学)
安倍政権が中韓両国からの入国者に対して2週間の待機を要請するという入国制限強化を打ち出した。しかしこの措置は合理的根拠に
欠けるうえに実効性に乏しく、自らを支持してくれていた右派層対策とトランプ氏やIOCへのご機嫌取りにしか思えない。
まず対象地域に選定に関しては、何故中韓二国(+香港とマカオ)だけでイランとイタリアが入っていないのか合理的な理由がない。
加藤厚労相によると「中国と韓国は患者が増加していることを踏まえての措置」とのことだが、中国からの入国を完全に遮断するの
ならば1か月前にやるべきであり、(表向き)湖北省以外での感染が収まりつつあるこのタイミングで中国に対して入国を制限する
科学的根拠がない。マカオに限って言えば、一か月近く新たな感染者が発生していない。
習近平国家主席の訪日延期が発表された日にこのような発表を行ったのは、しばらくは中国政府に対して以前ほど気を使う必要が
なくなったからだろう。しかしながら香港やマカオが含まれているのは明らかに中国政府に配慮してであり、非常に政治的な判断である。
個人的には、中国政府が感染拡大という自分たちの責任を棚に上げて日本からの入国者への2週間隔離措置を取ったことに怒りを感じる。
仮に今回の入国規制強化が中国に対する対抗措置であるとするならば、「中国側の不当な措置に対する対抗措置」だと明言すべきだ。
韓国に対する半導体輸出規制を強化したときもそうだったが、何故対抗措置と言わないで下手で非合理的な理屈をつけたがるのだろうか。
このようなウェットなやり方では相手に自分の意図が伝わりにくいため、相手に行動に改善を促すには逆効果となるケースが多々ある。
次に「待機」をどのように行うのかについても、おおよそ綿密に計画されたものとは思えない。NHKによると「検疫所の所長が指定する
場所での待機と国内において公共交通機関を使用しないよう要請するとしており」、待機場所については「基本的に、国内の方は
それぞれご自宅があれば、ご自宅で、海外からの方は当面、滞在するホテルが対象になる」と述べたそうだ。
そんなことまでされてわざわざこの時期に日本を訪問したい人はほとんどいないだろうが、公共交通機関を使用するなというならば、
タクシーを利用しろというのだろうか?感染が見つかった場合に最初に大きな被害をうけるのは乗車を許したタクシー運転手と
タクシー会社、さらに滞在を受けいれたホテルになる。政府が「待機」の施設を直接用意するわけではないので、政府の「要請」に
答えた民間業者が損をする仕組みになっているのである。
(続く)
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