「心の底から怖いと思いました」——。クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号に乗船した神戸大教授・岩田健太郎氏の報告は
ショッキングだった。船内の感染対策はずさん極まるものだという。19日、同船の乗客443人が下船。乗客はこれから段階的に
船を下りていくが、岩田氏は政府の隠蔽体質を痛烈に批判するのだ。
岩田氏は中国のSARSやアフリカのエボラ出血熱の治療に従事した経歴を持つ感染症の専門医。18日に災害派遣医療チーム
(DMAT)の一員としてクルーズ船に乗り込み、目撃した実態をユーチューブ(20日朝、同氏が削除)で語った。
結論をいえば船内は最悪だった。同氏によれば通常、感染症の現場では危険ゾーンと安全ゾーンをきちんと分け、危険ゾーンでは
防護服を着用するのが鉄則になっている。ところがクルーズ船の内部はそうした区分けができていないとして、こう明かした。
「それはもうひどいものでした。エボラやSARSと立ち向かったとき、自分が感染する恐怖を感じたことはなかったけど、
クルーズ船の中はものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました。感染症のプロがあんな環境に行ったら、ものすごく怖くて
しょうがない」
船内の衛生管理はアフリカや中国以下というわけだ。
「どこの手すり、どこのじゅうたん、どこにウイルスがいるかさっぱり分からない状態。手袋をはめていたり、マスクを着けてみたり、
着けなかったりするわけです」
すでに600人を超える大量感染を引き起こしているのも納得だ。
乗客だけでなく検査官ですら、いつ感染してもおかしくない状態だ。実際、岩田氏は検疫所の職員と船内を歩いているときに患者と
すれ違った。その際に職員が「あ、今、患者さんとすれ違っちゃった」と笑顔で話したことにショックを受けたという。危険ゾーンと
安全ゾーンの区別もなく、患者が自由に自室と医務室の間を行き来しているのだ。
また、こうした職員の口から漏れた「自分たちも感染するなと思ってますよ」という言葉にもビックリさせられた。なぜなら、
感染症の現場ではまず医療従事者が自分の身を守ることが大前提。自分たちのリスクをほったらかしにして患者の病気に立ち向かうのは
ご法度であり、ルール違反なのだという。
(続く)
返信する