中央省庁には地方を所管する地方局があり、例えば経済産業省は〇〇経済産業局、国土交通省には〇〇地方整備局、厚生労働省には
〇〇厚生局があり、財務省にも〇〇財務局があり、赤木俊夫さんが勤務していた近畿財務局もそのうちの1つです。
基本的に本省は政策立案、地方局はその政策を実行するという役割になっているので、地方局の職員は補助金の交付決定から補助金額を
確定して事業者に支払うなどの実務を担っています。赤木さんがいた近畿財務局も国有地払い下げの「実務」を担っていたはずです。
私たち国家公務員は補助金や契約など、お金にからむ案件は会計検査院の受検が一番怖いので、きちんとした書類を揃えるというのは
常識です。
赤木さんが文書を改ざんさせられている最中の2017年の4月と6月に会計検査院の受検が行われていますが、書類は出すな、文書は
保存していないと説明しろと言われたと手記に書いています。
そんな中、7月に自分以外の人が異動してしまい、関係資料もないと分かった時、自分だけに責任を負わせようとする財務省に対する
絶望感と改ざんしたという罪悪感によって精神を病んだのだろうと思います。
ちなみに翌8月には安倍昭恵夫人の秘書だった経産省のノンキャリの谷査恵子氏はイタリア大使館に一等書記官として赴任しています。
地方局では総合職いわゆるキャリアが新規採用されることはなく、全員ノンキャリですが、幹部といわれる局長や部長は本省からキャリアが
送り込まれてきます。
本省からみれば地方局は格下と見られていて、地方局は本省の言うことを聞いておけばいいんだと、本省から送り込まれた幹部のキャリアも
思っているので、赤木さんが改ざんに抵抗しても押し切られていく姿は身につまされます。
佐川宣寿局長が、なぜ文書記録は存在しないと国会で答弁したのか、決裁文書を改ざんしたのか? 安倍首相が国会で「妻と自分が関係
していたら総理大臣だけでなく、国会議員も辞めますよ」と言ったことが発端だということは、絶対に忘れてはならないことです。
『週刊文春』2020年3月26日号に掲載された赤木さんの遺書と手記を読んでから、ずっと心が沈んでいます。私自身、関東経済産業局という
赤木さんが働いていた近畿財務局と同じ「管区機関」で働き、ノンキャリの課長補佐という同じ役職だったので、他人事とは思えないからです。
赤木さんがなぜ改ざんを断ることができなかったのか? それは、赤木さんが旧国鉄から採用されたことにあるのではないかと私は思います。
高校卒業後、当時の国鉄に就職した赤木さんは、国鉄の分割民営化によって1987年に中国財務局に採用されました。
当時、10万人近い職員が余剰人員とされ、希望者は民間会社や民間鉄道会社や公務員などにあっせんされて就職しましたが、不採用になった人は
国鉄清算事業団に行かされました。
(続く)
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