「一律10万円給付」を正当化する緊急事態宣言の全国拡大に伴う臨時会見で、安倍首相が突然、口にした「3300円の布マスク」。
気にくわない質問への皮肉で引用されたこのマスクは、「繊維のまち」の底力を見せるプロジェクトから生まれたものだ。地元の大阪・
泉大津市はどう受け止めているのか。
17日の会見で朝日新聞の記者から布マスクが批判を浴びていることを指摘され、安倍首相はムキになって、こう切り返した。
「今、ご質問いただいた御社のネットでも、布マスク、3300円で販売しておられたと承知している。そのような需要も十分にある中で、
われわれもこの2枚の配布をさせていただいた」
実はこのネタ、しばらく前から“ネ卜ウヨ系”のまとめサイトで話題になっていた。そんな情報をもとに一国のトップが「朝日だって
高額マスクを売っているじゃないか」との印象操作とはア然だ。しかも、安倍首相が引き合いに出したマスクは、価格に見合う
高性能マスクなのだ。
製造元は、泉大津市の大津毛織。100年以上の歴史を誇る老舗の繊維メーカーだ。問題のマスクは2枚組3300円で、
コットン100%の4層構造。ナント、150回ほどの洗濯にも耐え、非常に経済的に使える。1回の使用当たり11円の計算だ。
アベノマスクは1回洗っただけで、驚くほど縮んでしまう。もはや“アホノマスク”とは雲泥の差である。
「繊維のまち」として知られる泉大津市が品切れ改善のため、地元商工会議所と連携したマスクプロジェクトの一環で開発された商品のひとつ。
市内での販売のほか、朝日新聞SHOP(現在休止中)にも出品されていた。
田立恵子・泉大津市議(共産)はこう憤る。
「会見の発言はひどいと思いました。地場産業を生かす取り組みに水を差すつもりですか。一つ一つ手作りで、どうしてもコストは
かかかりますが、高品質で長く使えます。大量の不良品が見つかっているアベノマスクと一緒にしないでほしい」
マスクプロジェクトの発案者は、2017年1月に当時府内最年少の37歳で泉大津市長に就いた南出賢一氏だ。電話で直撃した。
「マスクを求めてドラッグストアに行列する住民の姿を見て、何とかしなければと思いました。繊維のまちである泉大津市の素材と縫製技術を
活用し、何度も使えるマスクを作れば、マスク不足を解消できるのではないか——。3月6日に商工会議所に声をかけたところ、6社が手を
挙げてくれた。大急ぎでサンプルを作り、20日に店頭に並べると、その日に完売しました。その後も製造・販売を続けています」
(続く)
返信する