中国で感染が拡大し、世界へと広がりつつある新型コロナウイルスによる肺炎。政府は武漢市を中心とした湖北省に滞在する日本人について、
希望者全員をチャーター機で帰国させることを決め、きょうまでに3便が飛んだ。
チャーター機の第1便は、大急ぎで行われた調整の末に、1月28日午後8時すぎ羽田空港を飛び立ち武漢に向かった。しかし実はこの時点では、
武漢から帰国し発熱などの症状のなかった人たちがどこに向かうか、その滞在先は決まっていなかったのだ。
政府は、チャーター機派遣を決めた直後は、帰国後の検査で症状のない人は帰宅させる方針だった。しかし自民党などから感染拡大防止に
万全を期すため、症状のない人も当面は特定の場所で待機してもらうべきだとの声が強まったのを受け、急遽、滞在場所を確保する必要に
迫られたのだ。
首相官邸や観光庁などを中心に滞在場所の選定が進められる中、いくつかの民間のホテルが候補にあがった。しかし政府関係者の「従業員が
難色を示しているんだよね」という声が物語るように、交渉はなかなか前に進まなかった。
そしてチャーター機の離陸予定時刻のわずか数時間前。観光庁の担当者が藁にもすがる思いで頼ったのが千葉県勝浦市にある
「勝浦ホテル三日月」だった。
実は「ホテル三日月グループ」を30代で率いる若き社長・小?芳宗氏は、自民党幹部の海外視察の際に経済界の一員として参加したこともあり、
政府や自民党と接点があった。そして、観光庁の担当者もこの海外視察に同行していたため、小?社長と知己があり、アプローチを試みたのだ。
政府関係者によると、「勝浦ホテル三日月」は、宿泊予定者を千葉県内の2つのグループのホテルへ移すことも可能なことなど条件が最良だった上、
去年の台風15号で被災した地元住民に大浴場を無料開放した例もあったため、「政府は彼の男気にかけた面もあった」のだという。
政府からの依頼をうけたホテル三日月は、千葉県庁や勝浦市に、受け入れについての確認を求めた。勝浦市側は、土屋市長が「(滞在先が)
決まっていないのは予想していなかった」(31日の記者会見)と明かしているように、突然の要請に対し時間の制約がある中での受け入れ
決断となった。
受け入れ当日となる29日、ホテル三日月は従業員への説明を行うことにした。しかしまだ政府からの受け入れに関する要請書が手元になかった。
政府も多忙をきわめる混乱の中だったのだろう。そのことを官邸関係者に確認すると、「会議で(滞在先が)三日月であることは総理が了承
している。従業員には総理からの要請ですと伝えてほしい」と口頭で回答があったという。
一方で、受け入れる帰国者の人数については、想定外の事態が起きた。当初の予定は100人前後だった。ホテル側は、収容人数の関係上、
最大でも177部屋しかないことは伝えてあったという。実際にホテルに到着したのはバス7台で191人、当初の予定のおよそ2倍にのぼった。
(続く)
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