日本の感染症研究のトップランナーが、あまりにも悲惨な状況に置かれていました。
まずは国立感染症研究所(感染研)についてざっくり解説。インフルエンザやHIVなど感染症全般の研究に取り組む日本唯一の国立機関で、
致死性の高いエボラ出血熱などを研究するための「BSL4」施設を有しています。
2020年1月末には新型コロナウイルスの分離に成功。感染機構や病原性を解析し、ウイルス検査法・抗ウイルス薬・ワクチンなどの開発を
進めていく方針です。
そして見てもらいたいのが、2011年に公開された「国立感染症研究所機関評価報告書」。
医学分野のエキスパートなど11人で構成された国立感染症研究所研究評価委員会が感染研について評価を下したもので、そこには悲惨な
実態が掲載されていました。
まずは委員会からの意見。アメリカのNIH(国立衛生研究所)、CDC(疾病管理予防センター)、FDA(食品医薬品局)の役割を一手に担う
感染研の運営が職員個人の努力に依存しており、限界がきていると警鐘を鳴らしています。
感染研の回答。「日常的な感染症および予期することが難しい新興感染症の脅威から国民の健康を守るために必要な機能維持のためには、
感染研の予算・定員削減について十分配慮いただくことを切に希望する」としています。
基盤的研究費、研究事業費の額が研究所の規模から見るとかなり少なく、かつ次第に減少していることを問題視する委員会の意見に対しては……
アメリカのCDCが内部予算だけで研究費を賄えるようになっていることを踏まえ、基盤的研究費の十分な確保を強く望んでいる旨を回答。
「予算がとにかく足りない」これに尽きるようです。
すべての感染症に対応するには研究者が圧倒的に足りず、毎年定員削減が行われていることも委員会は問題視。感染研も予算と合わせて
「十分配慮いただくことを切に希望する」と訴えています。
予算も人も足りない中、職員の涙ぐましい努力に支えられてきたことが2011年時点でつまびらかにされていた感染研。しかし2019年4月に
行われた田村智子参院議員の国会質問で、驚きの実態が明かされました。
なんと窮状を訴えた後も感染研の予算削減は止まらず、10年前の約1/3(20億円)減らされていました。
(続く)
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