「各省庁でどんなこと(対応)をやっているのか、時間がないなら資料配布だけでも共有して、感染拡大防止と、それによる社会的影響をいかに
最小化するかについて大きな役割を持っているんだという当事者意識を、各閣僚が持ってもらわないといけない。その問題意識を持つための
対策本部でもある。そうしたことをやっていないから、私用で3人もの大臣が大事な対策会議を欠席するようなことになるんじゃないですか」
「政策課題の共有」と同時に枝野氏がもう一つ指摘したのは「省庁を横断した人手の確保」だ。
「厚労省は人手不足だと思う。感染防止に直接かかわることは厚労省にしかできないかもしれないが、地方(自治体)から情報を集めて資料にして、
何件検査ができているか把握するといったことは、他の役所から人を出してもらってできるはずだ。そういうことをこの対策本部でやったんですか」
さらにこう付け加えた。
「きのう(25日)、政府の基本方針が出されたが、(記者)会見したのは(加藤勝信)厚労相。基本方針の中身は厚労省の所管だけではないのに、
何で厚労相が発表するのか。政府全体の危機意識の欠如だと言わざるを得ない」「国民に『安心してください、ここまでやっていますよ』と言う責任が
あるのは、総理や官房長官ではないんですか。違いますか」
与野党の政権交代が起こりうる政治の意義は、野党側も政権運営の経験を持ち、相手を分かった上での質疑ができることなのだと実感した。
枝野氏は東日本大震災での自身の経験があってこそ、現在の安倍政権の対応の不足が分かる。厳しい追及の中にもそれなりに節度のある質疑を展開
しながら、一方で野党側に一定の政権担当能力があることをアピールする、なかなかよく考えられた質疑だと思えた。菅氏が答弁で「(震災の時は)
大変な思いのなかで陣頭指揮にあたられたと思う」と語るなど、この政権には珍しく、枝野氏に一定の敬意を払うような場面もみられた。
問題はやはり首相である。答弁はおおむねこんな感じだ。
「感染症対策については連日関係省庁から報告を受けるとともに、私を本部長とする対策本部において、関係閣僚に対して必要な指示を行うなど、
政府一丸となって全力で取り組んでいる。対策本部の際は報道陣の目の前で、私から直接指示を出している。官房長官も毎日2回会見を行い、われわれが
どういう対策をしているのか説明している」
「私は一生懸命やっている!」ということは繰り返されるが、肝心の「何をやっているか」が全くない。枝野氏は「首相が記者会見で直接国民に
訴えること」を求めていたが、正直、こういう言葉のまま記者会見に臨んでも、国民はかえって不安になるだけだろう。おそらくそれが分かっているから、
首相は対策本部の短い冒頭あいさつ、いわゆる「頭撮り」を報道陣に見せて「やってる感」を演出しているのだ。
(続く)
返信する