沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍新基地建設地の海面下七十メートル超の地盤に「軟弱」と示す実測データが存在していた問題で、
辺野古工事を独自に検証している専門家チームが、このデータを基に護岸の安定性を試算したところ、国の要求水準を満たさないことが
分かった。最悪の場合、埋め立てた盛り土が崩れ、護岸が崩壊する恐れがあるという。チームは「安全な施工は保証できない。今からでも
地盤を再調査すべきだ」と指摘する。
防衛省は「信頼性が低い」として、「軟弱」データを設計に反映していない。仮にデータ通り七十メートル超も軟弱地盤となれば、
国が求める設計水準を満たすには地盤改良の必要がある。しかし、国内の作業船の能力では七十メートルまでしか対応できず、新基地建設が
行き詰まる恐れも出てくる。
試算したのは、新潟大の立石雅昭名誉教授ら地質や地盤の専門家でつくる調査チーム。「軟弱」を示す実測データが検出された「B27」
地点には、巨大な護岸が設置される。チームは、B27地点で七十メートル超の地盤が「軟弱」だった場合、護岸が安全に建設できるか
どうか安定性を試算した。
防衛省は、新基地建設において、国土交通省が定める港湾施設の基準に基づいて設計している。
防衛省が昨年三月に国会へ提出した地盤改良の検討報告書では、B27地点から最長七百五十メートル離れた三地点から類推した強度を基に、
護岸の安定性を計算している。報告書によると、深度七十メートルまで地盤改良すれば要求水準をぎりぎり満たす結果だった。
一方、調査チームが、護岸下の地盤強度を今回発覚した「軟弱」なデータに置き換えて計算し直したところ、安定性は国が求める設計の
要求基準を満たさなかった。国交省の基準を満たさない設計は通常認められない。
調査チームの試算について、防衛省は取材に「仮定の話には答えられない」とした。
実測データを設計に反映していない点を、河野太郎防衛相は十四日の会見で「設計に影響が出ることではなく、リスクがあるとは思わない」と
発言。別地点のデータから七十メートル超の地盤が「非常に固い」とした判断は、「(有識者の)技術検討会からもお墨付きをもらっている」
として、追加のボーリング調査は必要ないとの見解を示した。
B27地点の地盤強度の実測データは、防衛省が国会に提出した資料の巻末に英文で記載されていた。これまで防衛省は、本紙の取材や
国会の質問に「強度試験はやっていない」と虚偽説明を繰り返し、実測データの存在も明らかにしていなかった。
(続く)
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