「#検察庁法改正案に抗議します」への反論をファクトチェック


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001 2020/05/30(土) 20:09:15 ID:We5/xH5xcs
1日で470万件を超えるツイートがあったハッシュタグ、「 #検察庁法改正案に抗議します 」。三権分立を脅かす極めて危険な法改正に
普段は政治的な発言を行わない著名人を含む多くのアカウントが反応しました。

不思議なことに、このハッシュタグに対抗するように作られたのは「#検察庁法改正案に興味ありません」というものでした。

ツイートでも「お前ら改正案読んでるのか?」「大騒ぎすることじゃない」といった相手をくさしたり「ただの検察官の定年延長の話で
高齢化社会への対応だけど?」といったミスリードばかり。

無理筋過ぎるためか積極的な賛成理由を述べるツイートがほぼ見当たらない異例な事態となっていましたが、5月11日なって多少なりとも
反論と呼べそうなものが出てきたため(とはいえ「賛成論」はほとんどありません)、その妥当性についてファクトチェックしてみます。

◆「黒川検事長の定年延長と改正案は別問題」という反論
・2019年の改正案から大きく変化しており、別問題とは言えない
反論のひとつとして出てきているのが、黒川検事長の定年延長と検察庁法改正案は別物であるというもの。

確かに前者は無理筋な法解釈の「口頭決裁」の上での閣議決定という、これ自体でアウトな案件であり、以前から議論されていた検察官の
定年延長に関する検察庁法改正案は一見別物に見えます。

ですがこの検察庁法改正案は、2019年の案では検察官の定年を65歳に引き上げるものの、63歳に達した後は検事長や検事正といった
要職には就けないとするシンプルなものでした。

山添拓議員の国会質疑では、2020年1月の法解釈変更後に改正案22条(編集部注:95ページを参照)の条文が大幅に加筆修正されたと
内閣法制局長官が明言しています。

つまり時系列から言えば、検察官の定年延長のみを定めていた2019年版の条文が、前代未聞の「口頭決裁」での無理筋の法解釈変更により
黒川検事長の定年延長が閣議決定された後、内閣の裁量による「勤務延長」が盛り込まれたことになります。

これらを単なる偶然でまったく無関係と主張するのはあまりにナイーブに過ぎるでしょう。

・別問題であっても内閣が人事を掌握するため極めて危険な法改正
なお、この法改正案は安倍政権と黒川検事長の蜜月という現状を取り払っても極めて危険なことには変わりがありません。

むしろ、総理大臣を逮捕することも可能な検察庁のトップの人事に内閣が介入し、子飼いの検察官を検事総長として長期に君臨させられる
仕組みが恒久的に組み込まれることが何よりも危険です。

例え安倍政権が清廉潔白だったとしても、今後私利私欲に走り犯罪を繰り返す「ならず者内閣」が誕生した際には、この法律が自らに検察庁の
捜査が及ぶことを防ぐ使い勝手のよい道具となってしまうのです。

繰り返しになりますが、検察官の「定年延長」と内閣の裁量での「勤務延長」は全く別問題であることは忘れてはなりません。

(続く)

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002 2020/05/30(土) 20:11:19 ID:We5/xH5xcs
◆「この法改正の施行期日前に黒川検事長は定年になるから無問題」という反論
・検察庁法改正案の附則の記述について
反論の別のパターンは、検察庁法改正の施行期日が2022年(令和4年)4月1日であることから、黒川検事長が65歳になる2022年2月8日には
定年となっているため、この改正案で黒川検事長の定年延長や勤務延長を行うことはできないとするもの。

なお大前提として、すでに定年延長された黒川検事長が2020年8月に検事総長に就任してしまう可能性があることは指摘しておきます。

その上で、この施行期日が示されているのは改正案の第十一の附則の一の部分。ここでは

この法律は、令和四年四月一日から施行するものとすること。ただし、二及び四は公布の日から施行することとするほか、必要な施行期日を
定めるものとすること。
(国家公務員法等の一部を改正する法律案要綱より引用)

となっています。この二と四というのが改正案の条文の「第二」と「第四」を指すのか、それとも附則の「二」と「四」を指すのかについて
混乱が生じ、「第四」で定年延長を含めた「所要の規定の整備を行う」こととされていたため物議を醸しました。ただしこれは誤読であるとの
指摘もあるため、附則の方を見てみると、こちらも

第四による改正後の検察庁法に規定する年齢が六十三年に達した検察官の任用に関連する制度について検討を行い、その結果に基づいて所要の
措置を講ずるものとすること。
(国家公務員法等の一部を改正する法律案要綱より引用)

となっており、「第四」に関連する制度の検討を行ったうえで、結果に基づいて「所要の措置を講ずる」とされています。要綱でなく改正案
そのものを見ても、附則第一条で

この法律は、令和四年四月一日から施行する。ただし、第三条中国家公務員退職手当法附則第二十五項の改正規定及び第八条中自衛隊法附則
第六項の改正規定並びに次条及び附則第十六条の規定は、公布の日から施行する。
(国家公務員法等の一部を改正する法律より引用)

となっています。そして附則第十六条では

新検察庁法に規定する年齢が六十三年に達した検察官の任用に関連する制度について検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずる
ものとする。
(国家公務員法等の一部を改正する法律より引用)

と、要綱とほぼ同じ内容となっています。結局どちらにせよ、公布日から63歳に達した検察官の「任用に関する制度」の検討が行われ、
その結果に基づいた「所要の措置」が講じられることになります。

(続く)

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003 2020/05/30(土) 20:13:33 ID:We5/xH5xcs
・法解釈の幅そのものの問題
そもそも政府の法解釈自体が「口頭決裁」によって変化させられてしまっている時点で幅の議論をする意味があるかについては疑問も残りますが、
ここで指摘しておきたいのは法律の条文自体の解釈の幅、つまり恣意性です。

「任用に関する制度」とは何か。そして講じられる「所要の措置」とはどこまでのものなのか、極めてあいまいでどのようにでも解釈できる文言が
ここでは使われています。

あいまいな文言で法解釈に幅を持たせる運用が日本の法律でこれまで散々行われてきたことは改めて言うまでもありません。

BUZZAP!では以前ダンス規制撤廃を求めた風営法改正に関して多くの記事を掲載しましたが、その際に警察庁が改正案に滑り込ませた「遊興」
という文言のあいまいさは改正風営法自体を極めて危険なものとしました。

「遊興」は「営業者の積極的な働きかけにより客に遊び興じさせる行為」全般とされ、警察が「遊興」だと思ったものすべてが対象となり、
改正後には老舗クラブの摘発などに繋がる結果となりました。

このように、法に解釈の幅が残されることで、法を執行する側にとってはいくらでも恣意的な運用が可能となります。

この法改正で黒川検事長の定年延長が可能かどうかを現時点で確定的に指摘することはできません。そして、その指摘できない法解釈の幅が
残されていること自体が危険だということは認識する必要があります。

なお、附則については今後法案成立までに新たに付け加えることも可能。与党が審議を強行し、黒川検事長の定年延長を確定させる附則を
加えた上で強行採決する可能性も十分にあるということです。

◆「検察官の定年延長は民主党政権が決めたこと」という反論
もはやおなじみとなった民主党政権に責任を負わせるというお決まりのパターン。これについては2018年(平成30年)に人事院の出した
「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出のポイント」という資料を見てみましょう。

(参考2)の「国家公務員の定年の引上げをめぐる検討の経緯」を見ると、この議論が始まったのは2008年(平成20年)6月のこと。
国家公務員制度改革基本法により、定年の段階的引き上げについて政府が検討する旨を規定しています。

2008年6月の総理大臣は福田康夫氏であり、当然ながら自民党政権です。その後2011年(平成23年)9月に人事院は意見の申出を行って
いますが、これは福田内閣時代の基本法に基づいて正常に検討が進んでいるという話に過ぎません。よって、この定年延長を民主党政権が
決めたというのは完全なデマとなります。

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