新型コロナウイルス対策をめぐり安倍首相が今月中の薬事承認に前のめりのアビガンに黄信号がともっている。動物実験で催奇形性が
認められる副作用の強さから安全性が疑問視されている上、臨床研究で有効性の判断がつかないからだ。
安倍首相のアビガンへの“思い入れ”はハンパじゃない。コロナ対応の首相会見7回のうち、5回も言及している。
「アビガンを含む3つの薬について、新型コロナウイルスに有効性があるかどうかを見極めるため、観察研究としての患者への投与を既に
スタートしています」(2月29日)
「アビガンには海外の多くの国から関心が寄せられており、今後、希望する国々と協力しながら臨床研究を拡大するとともに、薬の増産を
スタートします」(3月28日)
「アビガンの備蓄量を現在の3倍、200万人分まで拡大します」(4月7日)
そして、今月4日の会見で「今月中の承認を目指したいと考えています」と踏み込み、14日の会見では「有効性が確認されれば今月中の
承認を目指します」と強調。15日には「承認審査にあたって治験成績の提出は必須としない」と国会答弁し、特例扱いを認めた。
新型インフルエンザの治療薬としてアビガンを開発したのは、富士フイルム富山化学。富士フイルムホールディングスの子会社で、
トップの古森重隆会長は財界のアベ応援団のひとりだ。安倍首相が会見でアビガンに触れた翌日、富士フイルムの株価が上がったケースが
4回もあった。緊急経済対策には200万人分の備蓄として139億円の予算が計上され、経産省内には「アビガンチーム」が結成されている。
ところが、肝心の安全性と有効性には疑問符が付いたまま。新型コロナに対する治療効果を研究する藤田医科大は、学外の専門家による
評価委員会の中間解析の結果、「安全性などに問題はない」としたものの、「有効性の確認が主目的ではない」と予防線を張った。一方、
日本医師会の有識者会議は明確な有効性は示されていないとして、科学的根拠が十分でない候補薬を承認すべきではないと懸念を示している。
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏は言う。
「感染症治療薬については臨床研究にしろ、試験にしろ、健康な患者を対象にしやすい流行期に実施するのが鉄則。1月、2月には着手
すべきでした。基礎疾患を抱えて重症化しやすい患者では、薬の効果が表れるまで持ちこたえられない可能性があるためです。藤田医科大の
臨床研究は、プラセボ(偽薬)を投与した患者と効果を比べないワンアーム(非比較試験)なので、有効性を示すのは難しいでしょう。
いずれにせよ、タイミングもプロセスもズレている」
アビガンは2014年3月に新型インフル治療薬として承認されたが、厚労省部会で大モメし、厚労相の要請なしでは製造も販売もできない
「条件付き承認」となった、いわくつきでもある。拙速な判断は、それこそ命取りになるんじゃないか。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/27357...
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