朝日新聞は7月9日、「世界遺産対立 負の歴史見つめてこそ」との社説を掲載した。《世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」に関する展示をめぐり、日本と韓国の間で摩擦がおきている》問題を取り上げた。
《国としての対外的な約束は誠実に守る。日本が求めてきた、この原則を自ら曲げるようでは信頼は築けまい》
朝日新聞は、センターがアーカイブした端島炭鉱=軍艦島の元島民による証言を《当時を知る人びとの証言が、貴重な価値をもつのは論をまたない》と評価しながらも、《個々の体験の証言を取り上げるだけでは歴史の全体像は把握できない》と指摘した。
自分で《貴重な証言》と言っておきながら、それだけでは《歴史の全体像は把握できない》というのだ。
社説では、元島民が行った証言の価値を否定するため、次のように指摘した。
《朝鮮半島出身者の労務動員に暴力を伴うケースがあったことや、過酷な労働を強いたことは当時の政府の公文書などで判明しており、日本の裁判でも被害事実は認められている》
ところが、この部分は、歴史的事実として確認されていないという。事実だとすれば、《歴史の全体像を把握》できないどころか、単に歴史の捏造だと言っていい。
産業遺産情報センターのセンター長を務める加藤康子氏が、朝日新聞の社説に対して疑問を指摘する。
「社説を見た元端島島民より、『えっ! 政府が端島への労務動員時の暴力や島での強制労働を認めた公式文書や裁判記録があるの?』とお問い合わせがありました。というのも、社説は戦時中朝鮮半島出身者への虐待がなかったという元島民の証言の信頼性を、根本から否定する文脈で書かれているからです。センター開設にあたり、私たちは夥しい量の一次史料に目を通してきました。しかし、朝鮮半島から端島への労務動員で、《暴力を伴うケース》や、端島での業務で《苛酷な労働を強いた》ことを報告する公文書も、国内裁判事例も、見たことがありませんでした。そこで7月9日付で朝日新聞の社説がこのように書いた根拠を示してもらうために、質問状を送ることにしました。《公文書》と《裁判》という記述の根拠について、ご教示を依頼するものです」
三菱マテリアルからは7月13日付の「事実関係の回答書」が送付された。文書で《弊社が国内裁判で被告となっている事例はございません》と答えたのだ。
加藤センター長は、朝日新聞の端島炭鉱=軍艦島に対する報道姿勢に“偏向”があるのではないかと気になっている。
「耳を疑ったのは、ある大手メディアの論説委員の方が『在日は韓国にとって祖国の裏切り者という側面がある。なぜ韓国が嫌がる展示をして刺激するのか。韓国にいる韓国人の証言しか信用できない』と発言したことです。勇気を振り絞って真実を証言してくれた元島民に大変失礼だと思います」(同・加藤センター長)
https://news.livedoor.com/article/detail/18628516...
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