安倍晋三首相は2月29日、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、初めての国民に向けた会見を開いたが、小中高校などの一斉休校要請に
至った唐突な判断の具体的根拠は示さなかった。
政治決断への理解や協力を求めただけ。予備費2700億円を活用した経済対策には触れたがとりまとめはこれからだ。多くの国民が目にする
土曜夕方に会見を設定した割には、まさかの時間制限付きで、国民の不安と向き合う覚悟は、この日も見えなかった。
新型コロナウイルス感染拡大が深刻化する中、国民の不安解消に向けたリーダーシップある発信がないと指摘されてきた首相。この日は初めて、
国民に向けた記者会見となった。
唐突に、全国での休校に踏みきった判断には今後1〜2週間が、急速に進むか収束かの瀬戸際とする専門家会議の意見をもとに「学校で集団感染の
ような事態は起こしてはならない」と主張。「判断に時間をかけているいとまはなかった」「3月の実施は断腸の思い」と、理解を求めた。
保護者や企業の負担軽減へ、新たな所得助成制度をつくると述べ「正規、非正規問わずしっかりケアをする」と強調。153億円規模だった第1弾に
続き、約2700億円の19年度予備費を使った第2弾の経済対策を「10日のうちにとりまとめる」と述べた。受けたくても受けられない人が多い
ウイルス検査は「必要な検査が確実にできるよう国が仲介する」と述べ、来週、医療保険が適用できる措置を講じ、15分で検出できるキットを
今月中に開発することも表明した。
首相は「この戦いは政府だけでは乗り越えられない。国民1人1人の理解と協力が欠かせない」と呼びかけ、批判に真摯(しんし)に耳を傾けると
主張。全国で品切れが続くマスクは今月、月間6億枚以上を確保するとし、トイレットペーパーが品切れとなっていることも踏まえ「冷静な
購買活動を」と呼びかけた。
新たな助成金制度など、経済対策では具体的な対応が示された。これまで後手後手の対応が批判されてきたが、反省点を問われると「今回の
ウイルスはいまだに未知の部分が多い。前例にとらわれず、必要な対策をちゅうちょなく進めてきた」と豪語。「責任から逃れるつもりはない」と
結果責任に言及した。
会見では、カメラを見ながらゆっくりと話したが、質疑応答になると、手元の紙に目を落とす場面が目立った。幹事社2問、自由質問2問、
外国メディア1問しか指名されず、35分ほど経過すると、予定を超過したとして進行役が終了を通告。特段の公務もなく、時間はたっぷりある休日に
会見を開いたはずだが、「質問があります」と続行を求める記者の声に首相が応じることはなく、そのまま帰宅した。
(続く)
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